にんげんはんえい |
| 人間繁栄 |
冒頭文
津田洋造は、長男が生れた時、その命名に可なり苦しんで、いろいろ考え悩んだ末、一郎と最も簡単に名づけてしまった。長女が生れた時も、やはり同様にして、丁度春だったので、春子と最も簡単に名づけた。そして、それが結局好都合となった。彼は男の子が出来る毎に、二郎、三郎、四郎……と順々に名づけていった。九郎まできたら、此度は自分の名前を一字冠して、洋一郎、洋二郎……としてゆくつもりだった。女の子に対しては、生
文字遣い
新字新仮名
初出
「改造」1924（大正13）年5月
底本
- 豊島与志雄著作集 第二巻（小説Ⅱ）
- 未来社
- 1965（昭和40）年12月15日