はぐるま
歯車

冒頭文

一 レエン・コオト 僕は或知り人の結婚披露式につらなる為(ため)に鞄(かばん)を一つ下げたまま、東海道の或停車場へその奥の避暑地から自動車を飛ばした。自動車の走る道の両がわは大抵松ばかり茂っていた。上り列車に間に合うかどうかは可也(かなり)怪しいのに違いなかった。自動車には丁度僕の外に或理髪店の主人も乗り合せていた。彼は棗(なつめ)のようにまるまると肥った、短い顋髯(あごひげ)の持ち主だった

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 河童・或阿呆の一生
  • 新潮文庫、新潮社
  • 1968(昭和43)年12月15日