とよしまよしおちょ『たかおざんげ』かいせつ |
豊島与志雄著『高尾ざんげ』解説 |
冒頭文
私は先夜、眠られず、また、何の本も読みたくなくて、ある雑誌に載っていたヴァレリイの写真だけを一時間も、眺めていた。なんという悲しい顔をしているひとだろう、切株、接穂、淘汰(まびき)、手入れ、その株を切って、また接穂、淘汰(まびき)、手入れ、しかも、それは、サロンへの奉仕でしか無い。教養とは所詮(しょせん)、そんなものか。このような教養人の悲しさを、私に感じさせる人は、日本では、(私が逢った人のうち
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- もの思う葦
- 新潮文庫、新潮社
- 1980(昭和55)年9月25日