ふたたびうたよみにあたうるしょ
再び歌よみに与ふる書

冒頭文

貫之は下手な歌よみにて古今集はくだらぬ集に有之候。其貫之や古今集を崇拝するは誠に気の知れぬことなどと申すものゝ実は斯く申す生も数年前迄は古今集崇拝の一人にて候ひしかば今日世人が古今集を崇拝する気味合は能く存申候。崇拝して居る間は誠に歌といふものは優美にて古今集は殊に其粋を抜きたる者とのみ存候ひしも三年の恋一朝にさめて見ればあんな意気地の無い女に今迄ばかされて居つた事かとくやしくも腹立たしく相成候。

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本の名随筆 別巻30 短歌
  • 作品社
  • 1993(平成5)年8月25日