おちあいまちさんせんき
落合町山川記

冒頭文

遠き古里の山川を 思ひ出す心地するなり 私は、和田堀(わだぼり)の妙法寺の森の中の家から、堰(せき)のある落合川(おちあいがわ)のそばの三輪の家に引越しをして来た時、はたきをつかいながら、此様なうたを思わずくちずさんだものであった。この堰の見える落合の窪地に越して来たのは、尾崎翠(おざきみどり)さんという非常にいい小説を書く女友達が、「ずっと前、私の居た家が空(あ)いているから来ません

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造 昭和8年9月号」1933(昭和8)年9月1日

底本

  • 林芙美子随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2003(平成15)年2月1日