いなかがえり
田舎がえり

冒頭文

東京駅のホームは学生たちでいっぱいだった。わたしの三等寝台も上は全部学生で女と云えば、わたしと並んだ寝台に娘さんが一人だった。トランクに凭(もた)れて泣いているような鼻のすすりかたをしている。わたしは疲れていたので、枕もとのカアテンを引いてすぐ横になったが、眼をつぶらないうちに頭のところのカアテンが開いてしまって、三階の寝台で新聞を拡げている音がしている。三階から下まで通しになった一つのカアテンな

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 林芙美子随筆集
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 2003(平成15)年2月1日