ちょうじゃ
長者

冒頭文

何時の比(ころ)であったか、四国の吉野川の辺(ほとり)に四国三郎貞時と云う長者が住んでた。其の長者の家では日々奴隷を海と山に入れて、海の宝、山の宝を集め執らしたので、倉と云う倉には金銀財宝が満ち溢れていたが、人には爪のさきほども施してやる心がなかった。しかし、こうした貪慾の男でも、我が子は非常に可愛がって、小児(こども)のこととなるとどんなに無益な費(ついえ)をしてもいとわなかった。 長

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本怪談全集 Ⅱ
  • 桃源社
  • 1974(昭和49)年7月5日