かさねものがたり |
累物語 |
冒頭文
承応(しょうおう)二巳年(みどし)八月十一日の黄昏(ゆうぐれ)のことであった。与右衛門(よえもん)夫婦は畑から帰っていた。二人はその日朝から曳(ひ)いていた豆を数多(たくさん)背負っていた。与右衛門の前を歩いていた女房の累(かさね)が足を止めて、機嫌悪そうな声で云った。 「わたしの荷は、重くてしようがない、すこし別(わ)けて持ってくれてもいいじゃないか」 与右衛門はそれを聞くと、
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 怪奇・伝奇時代小説選集14 累物語 他十篇
- 春陽文庫、春陽堂書店
- 2000(平成12)年11月20日