五月六日 今宵は向嶋の姉に招かれて泊りがてら遊びに行くのである。 おさえ切れぬ嬉しさにそゝられて、日毎見馴れている玻璃窓外の躑躅でさえ、此の記念すべき日の喜びを句に纒めよと暗示するかのように見える。 母は良さんを連れて来た、良さんと云うのは此の旅を果させて呉れる——私にとっては汽車汽船よりも大切な車夫である。 俥は曳き出された。足でつッぱることの出来ぬ身体は