なかせんせいをおもう
那珂先生を憶う

冒頭文

文學博士那珂先生の卒去は實に突然の事で、吾輩は今猶夢の如く思ふ。左に少しく先生に就て知れる事實を紹介致さう。何分客舍匆卒の際であるから、年月や書名などには、多少の間違はあるかも知れぬ。是は豫め容赦を願つて置く。 先生は非常の勉強家で、其の記憶力は絶倫であつた。其の結果として博識であつたことは申す迄もない。先生の勉強は實に驚くべきもので、宴會などの後でも、家に歸れば必ず其儘机に凴つて、午前

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「大阪朝日新聞」1908(明治41)年3~4月(五回に分載)

底本

  • 桑原隲蔵全集 第二巻
  • 岩波書店
  • 1968(昭和43)年3月13日