たぬきとはいじん
狸と俳人

冒頭文

安永(あんえい)年間のことであった。伊勢大廟(いせたいびょう)の内宮領(ないぐうりょう)から外宮領(げくうりょう)に至る裏道に、柿で名のある蓮台寺(れんだいじ)と云う村があるが、其の村に澤田庄造(さわだしょうぞう)という人が住んでいた。 庄造は又の名を永世(ながよ)と云い、号を鹿鳴(ろくめい)と云って和歌をよくし俳句をよくした。殊に俳句の方では其の比(ころ)なかなか有名で、其の道の人びと

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 怪奇・伝奇時代小説選集3 新怪談集
  • 春陽文庫、春陽堂書店
  • 1999(平成11)年12月20日