たぬきとどうせいするひとづま
狸と同棲する人妻

冒頭文

山形県最上郡(もがみぐん)豊田村(とよだむら)に沓澤仁蔵(くつざわにぞう)と云う行商人があった。仁蔵は壮(わか)いに似あわず、家業に熱心で、毎日のように村から村へと行商に出かけて往った。其の仁蔵には直(なお)と云う近隣で評番(ひょうばん)の美しい女房があった。 それは昭和七年の二月のことであった。仁蔵は平生(いつも)のように家を出て往(い)ったが、どうしたものか其の日も其の翌日も、また其

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 怪奇・伝奇時代小説選集3 新怪談集
  • 春陽文庫、春陽堂書店
  • 1999(平成11)年12月20日