ねこのあなほり
猫の穴掘り

冒頭文

猫が庭へ出て用を便じようとしてまず前脚で土を引っかき小さな穴を掘起こして、そこへしゃがんで体の後端部をあてがう。しかしうまく用を便ぜられないと、また少し進んで別のところへ第二の穴を掘って更に第二の試みをする。それでもいけないと更に第三、第四と、結局目的を達するまでこの試みをつづけるのである。工合(ぐあい)の悪いのが自分の体のせいでなくて地面の不適当なせいだと思うらしい。 どこへ住居を定め

文字遣い

新字新仮名

初出

「大阪朝日新聞」「東京朝日新聞」1934(昭和9)年9月1日

底本

  • 寺田寅彦全集 第四巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年3月5日