しょとうのにっきから
初冬の日記から

冒頭文

一年に二度ずつ自分の関係している某研究所の研究成績発表講演会といったようなものが開かれる。これが近年の自分の単調な生活の途上に横たわるちょっとした小山の峠のようなものになっている。学生時代には学期試験とか学年試験とかいうものがやはりそうした峠になっていたが、学校を出ればもうそうしたものはないかと思うと、それどころか、もっともっとけわしい山坂が不規則に意想外に行手に現われて来た。これは誰でも同じく経

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1934(昭和9)年1月

底本

  • 寺田寅彦全集 第四巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年3月5日