ドストイェフスキーについて
ドストイェフスキーに就いて

冒頭文

どんな人間でもその性格に皆多少の矛盾を有つてゐる。そしてその矛盾のために多少とも苦しみ惱んでゐる。そしてその矛盾の苦しみの烈しければ烈しいほどその求めてゐる統一に達することの困難であるのは勿論だが、同時にその大いなる矛盾は大いなる統一を豫想するものであるといへる。人の一生の幸不幸は、性格の矛盾の大小によつてきまるわけではなくてその矛盾がどれだけ統一せられつつ進んで行つたかといふことによつてきまる。

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 片上伸全集 第3巻
  • 日本図書センター
  • 1997(平成9)年3月25日