しばせんのせいねんにかんするいちしんせつ |
司馬遷の生年に関する一新説 |
冒頭文
一 司馬遷が支那の學者達に推奬される程、それ程の大歴史家であるかは、一の疑問と思ふ。率直にいふと、私は彼の史才や史筆に就いて、飽足らなく感ずる點が尠くない。併し彼の作つた『史記』は支那歴史の正史の模範となり、支那の史學界、否更に廣く東亞諸國の史學界に、多大の裨益と影響を與へて居る。この點より觀れば、彼は正しく支那史學の開祖として、百代に尸祝されるべき者で、西洋學者が彼に附與した「支那のヘロド
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「史學研究 第一卷第一号」広島史学研究会、1929(大正2)年8月
底本
- 桑原隲藏全集 第二卷 東洋文明史論叢
- 岩波書店
- 1968(昭和43)年3月13日