いっぺいそつとじゅう
一兵卒と銃

冒頭文

霧(きり)の深(ふか)い六月(ぐわつ)の夜(よる)だつた。丁度(ちやうど)N原(はら)へ出張演習(しゆつちやうえんしふ)の途上(とじやう)のことで、長(なが)い四列(れつ)縱隊(じうたい)を作(つく)つた我我(われわれ)のA歩兵(ほへい)聯隊(れんたい)はC街道(かいだう)を北(きた)へ北(きた)へと行進(かうしん)してゐた。 風(かぜ)はなかつた。空氣(くうき)は水(みづ)のやうに重(

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「文藝倶樂部」1919(大正8)年12月号

底本

  • 新進傑作小説全集 第十四巻(南部修太郎・石濱金作集)
  • 平凡社
  • 1930(昭和5)年2月10日