わかれ
わかれ

冒頭文

わが青年(わかもの)の名を田宮峰二郎(たみやみねじろう)と呼び、かれが住む茅屋(くさや)は丘の半腹にたちて美(うる)わしき庭これを囲み細き流れの北の方(かた)より走り来て庭を貫きたり。流れの岸には紅楓(もみじ)の類(たぐい)を植えそのほかの庭樹(き)には松、桜、梅など多かり、栗樹(くり)などの雑(まじ)わるは地柄(とちがら)なるべし、——区何町の豪商が別荘なりといえど家も古び庭もやや荒れて修繕(つ

文字遣い

新字新仮名

初出

「文芸倶楽部」1898(明治31)年10月

底本

  • 武蔵野
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1939(昭和14)年2月15日、1972(昭和47)年8月16日改版