はつこい
初恋

冒頭文

僕の十四の時であった。僕の村に大沢先生という老人が住んでいたと仮定したまえ。イヤサ事実だが試みにそう仮定せよということサ。 この老人の頑固(がんこ)さ加減は立派な漢学者でありながらたれ一人(ひとり)相手にする者がないのでわかる。地下(じげ)の百姓を見てもすぐと理屈でやり込めるところから敬して遠ざけられ、狭い田の畔(くろ)でこの先生に出あう者はまず一丁前(さき)から避(よ)けてそのお通りを

文字遣い

新字新仮名

初出

「太平洋」1900(明治33)年10月

底本

  • 武蔵野
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1939(昭和14)年2月15日、1972(昭和47)年8月16日改版