しそう
詩想

冒頭文

丘の白雲 大空に漂う白雲(しらくも)の一つあり。童(わらべ)、丘にのぼり松の小かげに横たわりて、ひたすらこれをながめいたりしが、そのまま寝入りぬ。夢は楽しかりき。雲、童をのせて限りなき蒼空(あおぞら)をかなたこなたに漂う意(こころ)ののどけさ、童はしみじみうれしく思いぬ。童はいつしか地の上のことを忘れはてたり。めさめし時は秋の日西に傾きて丘の紅葉(もみじば)火のごとくかがやき、松の梢(こずえ

文字遣い

新字新仮名

初出

「家庭雑誌」1898(明治31)年4月

底本

  • 武蔵野
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1939(昭和14)年2月15日、1972(昭和47)年8月16日改版