しかがり |
鹿狩り |
冒頭文
『鹿狩(しかが)りに連れて行(い)こうか』と中根(なかね)の叔父(おじ)が突然(だしぬけ)に言ったので僕はまごついた。『おもしろいぞ、連れて行こうか、』人のいい叔父はにこにこしながら勧めた。 『だッて僕は鉄砲がないもの。』 『あはははははばかを言ってる、お前に鉄砲が打てるものか、ただ見物に行くのだ。』 僕はこの時やっと十二であった。叔父が笑うのも道理で、鹿狩りどころか雀(すずめ)一ツ自分
文字遣い
新字新仮名
初出
「家庭雑誌」1898(明治31)年8月
底本
- 武蔵野
- 岩波文庫、岩波書店
- 1939(昭和14)年2月15日、1972(昭和47)年8月16日改版