おとずれ
おとずれ

冒頭文

⦅上⦆ 五月二日付の一通、同十日付一通、同二十五日付の一通、以上三通にてわれすでに厭(あ)き足りぬと思いたもうや。もはやかかる手紙願わくは送りたまわざれとの御意(ぎょい)、確かに承りぬ。されど今は貴嬢(きみ)がわれにかく願いたもう時は過ぎ去りてわれ貴嬢(きみ)に願うの時となりしをいかにせん。昨年の春より今年の春まで一年(ひととせ)と三月(みつき)の間、われは貴嬢(きみ)が乞(こ)わるるま

文字遣い

新字新仮名

初出

「国民之友」1897(明治30)年11月

底本

  • 武蔵野
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1939(昭和14)年2月15日、1972(昭和47)年8月16日改版