おきみやげ
置土産

冒頭文

餅(もち)は円形(まる)きが普通(なみ)なるわざと三角にひねりて客の目を惹(ひ)かんと企(たく)みしようなれど実は餡(あん)をつつむに手数(てすう)のかからぬ工夫不思議にあたりて、三角餅の名いつしかその近在に広まり、この茶店(ちゃや)の小さいに似合わぬ繁盛(はんじょう)、しかし餅ばかりでは上戸(じょうご)が困るとの若連中(わかれんじゅう)の勧告(すすめ)もありて、何はなくとも地酒(じざけ)一杯飲め

文字遣い

新字新仮名

初出

「太陽」1900(明治33)年12月

底本

  • 武蔵野
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1939(昭和14)年2月15日、1972(昭和47)年8月16日改版