かいがらついほう 013 せんせいのちゅうこく
貝殻追放 013 先生の忠告

冒頭文

或日曜の朝の事であつた。寢坊をした床の中でぼんやりして、起きようか寢てゐようか迷ひながら、枕頭(まくらもと)の火鉢の上の鐵瓶の口から、さかんに立昇る湯氣を見てゐるところに、こまつちやくれの下宿の小婢(ちび)が、來客のある事を告げに來た。その取次いだ名前が昔の學校友達のそれと同一だつたので、自分は一緒に惡戲(いたづら)つ子だつた中學時代の友達の、今川燒のやうにまあるく平べつたくて、しかもぶよぶよして

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「三田文學」1919(大正8)年1月号

底本

  • 水上瀧太郎全集 九卷
  • 岩波書店
  • 1940(昭和15)年12月15日