かいがらついほう 008 「そのはるのころ」のじょ
貝殻追放 008 「その春の頃」の序

冒頭文

自分の第二小説集「その春の頃」は、大正元年の秋自分が渡米した後で、第一集「處女作」に續いて突然出版の運びになつた。第二集の爲めにと思つて書いた序文は間に合はなかつたので、その儘机の抽出にしまはれてしまつた。此頃、夥しい書きかけの原稿の整理をしてゐると、その序文が皺くちやになつて出て來た。讀みかへして見ると或時代の自分の心持が蘇生して來て、裂いて捨てるのは殘り惜しく思はれるので、清書して世に出す事に

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「三田文學」1918(大正7)年8月号

底本

  • 水上瀧太郎全集 九卷
  • 岩波書店
  • 1940(昭和15)年12月15日