かいがらついほう 004 「まぼろしのえま」のさくしゃ
貝殻追放 004 「幻の絵馬」の作者

冒頭文

「幻の繪馬」讀後の感想是非とも申述度存居候ひし處、先頃來健康勝れず臥床勝にて到底期日迄に書上げ候事覺束なく被存候まゝ、乍殘念今囘は御斷り申上候。事情右の如くに候間不惡思召被下度候。 今日小説の作家その數極めて多しと雖古典として作品の千歳に殘るべき人は僅かに二三人にとどまる事と存候が、泉鏡花先生の御作のみは何時(いつ)の世に至りても紫式部清少納言近松西鶴等の作品と共に不朽なるべき事些も疑ひ無之

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「中央文學」1917(大正6年)5月号

底本

  • 水上瀧太郎全集 九卷
  • 岩波書店
  • 1940(昭和15)年12月15日