かいがらついほう 003 「ぶんめいいっしゅうねんのき」をよみて
貝殻追放 003 「文明一周年の辞」を読みて

冒頭文

大正元年の秋海外の旅に出(いで)しより余の永井荷風先生に見(まみ)えざる事既に久しく、昨年十月歸朝以來常にお目にかかり度くおもひながら、機を得ずして遂に今日に及びたりしが、この度「文明一周年の辭」を讀みて更に痛切に余の先生に見えざる事久しきをおもへり。 「三田の文人中近く海外より歸來せしもの文明を一覽して甚しく余が藝術家としての態度の不眞面目なるを攻撃したりと聞く」といふ一事より出發して先生

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「文明」1917(大正6年)4月号

底本

  • 水上瀧太郎全集 九卷
  • 岩波書店
  • 1940(昭和15)年12月15日