はな

冒頭文

禅智内供(ぜんちないぐ)の鼻と云えば、池(いけ)の尾(お)で知らない者はない。長さは五六寸あって上唇(うわくちびる)の上から顋(あご)の下まで下っている。形は元も先も同じように太い。云わば細長い腸詰(ちょうづ)めのような物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下っているのである。 五十歳を越えた内供は、沙弥(しゃみ)の昔から、内道場供奉(ないどうじょうぐぶ)の職に陞(のぼ)った今日(こんにち)ま

文字遣い

新字新仮名

初出

「新思潮」1916(大正5)年2月

底本

  • 芥川龍之介全集1
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1986(昭和61)年9月24日