むだい(いち)
無題(一)

冒頭文

故国に居る父や母が、きっと此那物を送ったら喜ぶだろうと思ってわざわざ送って下さった種々の物、仮令其は如何那(どんな)小さい物であろうと、私は恐らく両親の期待された以上の喜びを以て其を戴く。 若し、自分の家に居て、何の不自由も感じない生活の中に於てなら、或は、不満さえ抱くかもしれないものにさえ深い有難さを感じずには居られない。 よく本を送って下さる。遠い所を手荒な人足の手で、船艙

文字遣い

新字新仮名

初出

「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日

底本

  • 宮本百合子全集 第十八巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年5月30日