たろうぼう
太郎坊

冒頭文

見るさえまばゆかった雲の峰(みね)は風に吹(ふ)き崩(くず)されて夕方の空が青みわたると、真夏とはいいながらお日様の傾(かたむ)くに連れてさすがに凌(しの)ぎよくなる。やがて五日頃(ごろ)の月は葉桜(はざくら)の繁(しげ)みから薄(うす)く光って見える、その下を蝙蝠(こうもり)が得(え)たり顔にひらひらとかなたこなたへ飛んでいる。 主人(あるじ)は甲斐甲斐(かいがい)しくはだし尻端折(し

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • ちくま日本文学全集 幸田露伴
  • 筑摩書房
  • 1992(平成4)年3月20日