ふたすじのち
二筋の血

冒頭文

夢の樣な幼少の時の追憶、喜びも悲みも罪のない事許り、それからそれと朧氣に續いて、今になつては、皆、仄(ほの)かな哀感の霞を隔てゝ麗(うらゝ)かな子供芝居でも見る樣に懷かしいのであるが、其中で、十五六年後の今日でも猶、鮮やかに私の目に殘つてゐる事が二つある。 何方(どつち)が先で、何方が後(あと)だつたのか、明瞭(はつきり)とは思出し難い。が私は六歳で村の小學校に上つて、二年生から三年生に

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 石川啄木作品集 第二巻
  • 昭和出版社
  • 1970(昭和45)年11月20日