これ、解剖學者に取ツては、一箇神聖なる物體である、今日解剖臺に据ゑられて、所謂(いはゆる)學術研究の材となる屍體は、美しい少女(をとめ)の夫(それ)であツた。此樣なことといふものは、妙に疾(はや)く夫から夫へとパツとするものだ、其(それ)と聞いて、此の解剖を見る級(クラス)の生徒の全(すべて)は、何んといふことは無く若い血を躍らせた。一ツは好奇心に誘(つ)られて、「美しい少女」といふことが強く彼等