かいぼうしつ
解剖室

冒頭文

これ、解剖學者に取ツては、一箇神聖なる物體である、今日解剖臺に据ゑられて、所謂(いはゆる)學術研究の材となる屍體は、美しい少女(をとめ)の夫(それ)であツた。此樣なことといふものは、妙に疾(はや)く夫から夫へとパツとするものだ、其(それ)と聞いて、此の解剖を見る級(クラス)の生徒の全(すべて)は、何んといふことは無く若い血を躍らせた。一ツは好奇心に誘(つ)られて、「美しい少女」といふことが強く彼等

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 現代日本文學全集 84 明治小説集
  • 筑摩書房
  • 1957(昭和32)年7月25日