はは

冒頭文

一 部屋(へや)の隅に据えた姿見(すがたみ)には、西洋風に壁を塗った、しかも日本風の畳がある、——上海(シャンハイ)特有の旅館の二階が、一部分はっきり映(うつ)っている。まずつきあたりに空色の壁、それから真新しい何畳(なんじょう)かの畳(たたみ)、最後にこちらへ後(うしろ)を見せた、西洋髪(せいようがみ)の女が一人、——それが皆冷やかな光の中に、切ないほどはっきり映っている。女はそこにさっき

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1921(大正10)年9月

底本

  • 芥川龍之介全集4
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1987(昭和62)年1月27日