一 曇つた日だ。 立待岬(たちまちさき)から汐首(しほくび)の岬まで、諸手(もろて)を擴げて海を抱いた七里の砂濱には、荒々しい磯の香りが、何憚(はばか)らず北國の強い空氣に漲(ひた)つて居る。空一面に澁い顏を開いて、遙かに遙かに地球の表面を壓して居る灰色の雲の下には、壓せれれてたまるものかと云はぬ許りに、劫初の儘の碧海が、底知れぬ胸の動搖の浪をあげて居る。右も左も見る限り、鹽を含んだ荒砂は、冷