くもはてんさいである
雲は天才である

冒頭文

一 六月三十日、S——村尋常高等小學校の職員室では、今しも壁の掛時計が平常(いつも)の如く極めて活氣のない懶(もの)うげな悲鳴をあげて、——恐らく此時計までが學校教師の單調なる生活に感化されたのであらう、——午後の第三時を報じた。大方今は既(はや)四時近いのであらうか。といふのは、田舍の小學校にはよく有勝(ありがち)な奴で、自分が此學校に勤める樣になつて既に三ヶ月にもなるが、未(いま)だ嘗て此時

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 石川啄木作品集 第二巻
  • 昭和出版社
  • 1970(昭和45)年11月20日