ごだいどう
五大堂

冒頭文

(一) 世にうれしき事はかずあれど、親が結びし義理ある縁にて、否でも否といひいでがたき結髪の夫にもあれ、妻にもあれ、まだ祝言のすまぬうち、死せしと聞きしにまさりたるはあらずかし。こゝに娘で名高き青柳子爵の一人姫糸子といへるも未来の夫とさだめし人の、心に染まぬそれ故に、うき年月をおくりしが、この頃おもき病にてうせしときゝしうれしさに、今まで青き顔色も、きのふにかはる美くしさ。しづみ心もうき立ち

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 田澤いなぶね作品集
  • 無明舎出版
  • 1996(平成8)年9月10日