こがねのかめ
黄金の甕

冒頭文

このお譚(はなし)は、わたしが少年の頃に、安寧寺と云ふお寺の和尚さんから聞いたお譚です。和尚さんは、いいか、この譚のもとは、この村に、幾百年だか判らないほど古くから言ひ伝へてあつた譚ぢや、忘れずにゐてくれ——と、斯う云つて話されたのです。 それ、ここから見えるあの田甫(たんぼ)ぢや、あれが、この村の開けないずつと往昔(むかし)は一面の沼だつたのぢや、蘆(あし)や蒲(かば)が生え茂つてゐて

文字遣い

新字旧仮名

初出

「小学男生」1921(大正10)年8月号

底本

  • 定本 野口雨情 第六巻
  • 未來社
  • 1986(昭和61)年9月25日