いしかわたくぼくとこやっこ
石川啄木と小奴

冒頭文

石川啄木が歿(なくな)つてからいまだ二十年かそこらにしかならないのに、石川の伝記が往々誤り伝へられてゐるのは石川のためにも喜ばしいことではない、況(いは)んや石川が存生中の知人は今なほ沢山あるにも拘はらず、その伝記がたまたま誤り伝へられてゐるのを考へると、百年とか二百年とかさきの人々の伝記なぞは随分信をおけない杜撰なものであるとも思へば思はれます。ですから一片の記録によつてその人の一生を速断すると

文字遣い

新字旧仮名

初出

「週刊朝日」1929(昭和4)年12月8日号

底本

  • 定本 野口雨情 第六巻
  • 未來社
  • 1986(昭和61)年9月25日