よがらす
夜烏

冒頭文

夏水をかぶつた猿ヶ馬場耕地の田地は、出来秋の今となつては寔に見すぼらしいものであつた。ひこばえのやうにひよろ〳〵した茎からは、老女のちゞれた髪の毛を思はせるやうな穂が見える。それも手にとつて見るとしいなが多い。枯穂も少くない。刈つたところで藁の値うちしかないかもしれない。米として見た処で鳥の餌の少し上等な位にしか精(しら)げられないだらうと思はれる。地租特免になつても、小作ばかりの此貧村の百姓に何

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 定本 平出修集
  • 春秋社
  • 1965(昭和40)年6月15日