躍場が二つもある高い階段を軽くあがつて、十六ばかりの女給仕が社長室の扉をそつと叩いた。 「よろしい。」社長の松村初造はちよいと顔を蹙めたが、すぐ何気ない風になつて、給仕を呼入れた。「あの、田代さんからお電話でございますが。」「うむ。」「只今からお伺ひいたしたいんでございますが……。」「居ると云つたか。僕が、ここに。」松村はうるささうに中途で給仕の詞を遮つた。「いいえ。あの……」給仕はおづおづしな