こうはん
公判

冒頭文

これは某年某月某日、ある裁判所に起つた出来事である。 正面には裁判長が二人の陪席とともに衣冠を正して控へて居た。向つて左には検事、右には書記、判事席のうしろの窓下には三人の試補が背広服で見習の為め傍聴をして居る。冬の日の曇つた光は窓を通して僅に法廷の半程にしか届かない。ずつと下の被告や弁護人の席はもう薄ぐらく、その後方に設けてある傍聴人席は殆どたそがれどきのやうに陰気臭い。編笠を脱がせら

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 定本 平出修集
  • 春秋社
  • 1965(昭和40)年6月15日