だいぼさつとうげ 10 しちゅうそうどうのまき
大菩薩峠 10 市中騒動の巻

冒頭文

一 白根(しらね)入りをした宇津木兵馬は例の奈良田の湯本まで来て、そこへ泊ってその翌日、奈良王の宮の址(あと)と言われる辻で物凄い物を見ました。兵馬が歩みを留めたところに、人間の生首(なまくび)が二つ、竹の台に載せられてあったから驚かないわけにはゆきません。捨札(すてふだ)も無く、竹を組んだ三脚の上へ無雑作(むぞうさ)に置捨てられてあるが、百姓や樵夫(きこり)の首ではなくて、ともかくも武

文字遣い

新字新仮名

初出

第十巻「市中騒動の巻」「都新聞」1918(大正7)年 6月21日~8月17日

底本

  • 大菩薩峠3
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年1月24日