じぶんのこと
自分のこと

冒頭文

明治二十五年の秋、仙臺で生れた。このことは姓と結び合せて自分を宮城縣人と思ふ人もあるらしいが、たゞ生誕の地といふだけで、三ヶ月後には仙臺を去り、それから土木技師である父の轉勤につれて東京・神戸・熊本・博多・長崎と轉住した。長崎には住むこと七年、小學校課程の大半をこゝで過し、少年時代の追想の懷しい町である。明治三十八年の春、また父の轉勤とともに東京に上り、赤坂・麹町・四谷に住み移つたが、麻布に家が極

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 新進傑作小説全集月報第七號(南部修太郎集・石濱金作集付録)
  • 平凡社
  • 1930(昭和5)年2月15日