そのひとのよねんかん ふじんみんしゅクラブのおいたちとくしだふきさん
その人の四年間 婦人民主クラブの生い立ちと櫛田ふきさん

冒頭文

一 一九四三年だったかそれともその翌年だったか、ある夏のことであった。ある晩わたしは、中野鷺宮の壺井栄さんの家の縁側ですずんでいた。そのころ、わたしにとって栄さんの家は生活の上になくてはならない休みどころであった。手拭の新しいので縫った小さい米袋に、ひとにぎりの米を入れ、なにかありあわせたおかずがあればそれも買物籠に入れて栄さんのところに出かけた。そして栄さんの家族にまじって賑やかな、それで

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人民主新聞」1950(昭和25)年3月31日、4月8、15、22日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日