てづくりながら
手づくりながら

冒頭文

正月元日に巖本真理のヴァイオリン独奏の放送をきいた。そして、その力づよくて純潔な音色からつよい印象をうけた。シゲッティというヴァイオリンの名手が来朝したとき、もう地下活動をしていた小林多喜二がこっそりききに行って、ひどく感動したという話をきいたことを思い出したりした。そしたら、新聞に、巖本真理が半年ほどアメリカ、カナダの演奏旅行に出発するという記事がのっていた。 わたしの心の火に、藤田嗣治の

文字遣い

新字新仮名

初出

「アカハタ」日本共産党中央機関紙、1950(昭和25)年2月19日号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日