ちいさいふじんたちのはつげんについて 『わたしたちもうたえる』まえがき
小さい婦人たちの発言について 『わたしたちも歌える』まえがき

冒頭文

春のなだれは、どんなふうにして起るだろう。暖かさが朝ごとにまして来る太陽にとかされてゆく積雪の表面からこれは起らない。冬の間じゅう降りつもって、かたく鋭く氷っていた根雪の底が春に近づく地殼のぬくもりにとけて、ある日、なだれとなる。 歴史は、どんな風に前進しているだろう。ふるい煤やごみでよごれた表面をもったなりで、しかし、その底の方では確実に新しいものが動きはじめている。夜も昼もと、おさえ

文字遣い

新字新仮名

初出

「わたしたちも歌える」学生書房、1949(昭和24)年12月発行

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日