なつかしいなかま
なつかしい仲間

冒頭文

友達ということを思うと、私の心にきっと甦って来る一つの俤がある。 村上けい子さんといったあの子は今どんな風に暮しているのだろうか。やっぱり東京にいるのかしら。それとも、どこかの田舎の町にでもいるのかしら、それとももうこの世の中にはいない人になってしまってでもいるのだろうか。そういう風にこの二十何年間のうつりゆきを、まるで絶えている消息のなかに探るのである。私が小学校の六年だったとき、一年

文字遣い

新字新仮名

初出

「新女苑」1940(昭和15)年5月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日