此作は、名古屋刑務所長、佐藤乙二氏の、好意によって産れ得たことを附記す。 ——一九二三、七、六—— 一 若(も)し私が、次に書きつけて行くようなことを、誰かから、「それは事実かい、それとも幻想かい、一体どっちなんだい?」と訊(たず)ねられるとしても、私はその中のどちらだとも云い切る訳に行かない。私は自分でも此問題、此事件を、十年の間と云うもの、或時はフト「俺も怖(おそ)