カトルーズのよる
十四日祭の夜

冒頭文

七月も一日二日で十日になる。今年も暑気はきびしいように思われる。年々のいろいろな七月、いろいろなあつさを思いかえすうち、不図明るい一つの絵提灯のような色合いでパリの七月十四日の夜が記憶に甦って来た。 一七八九年の七月十四日、フランスの人々は現代に到る自分たちの社会を持つようになった。その国民的な祝祭が十四日祭(カトルーズ)に毎年行われる。 映画の「巴里の屋根の下」に撮されている

文字遣い

新字新仮名

初出

「モダン日本」1939(昭和14)年9月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日