えいが
映画

冒頭文

雨傘をさし、爪革のかかった下駄をはいて、小さい本の包みをかかえながら、私は濡れた鋪道を歩いていた。夕方七時すぎごろで、その日は朝からの雨であった。私は、その夜手許におかなければならない本があったし、かたがたうちにいるのがいやで、外に出て来たのであった。自分が親切と思ってしたこと、そのことが思っていたような結果としてはあらわれず、自分が自分の親切に甘えたということばかりが思い当るような気持のことがあ

文字遣い

新字新仮名

初出

「若草」1937(昭和12)年4月号

底本

  • 宮本百合子全集 第十七巻
  • 新日本出版社
  • 1981(昭和56)年3月20日